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第7回  〜プロモーションビデオ〜

店頭で流れるゲームの解説ビデオ

 大きい電気街やゲームショップに置かれたテレビモニターには、実際の商品が遊べるようになっていたり、ゲームのデモを延々と流していたりするね。それとは別に、これから発売されるゲームの解説や宣伝などが流れているのを見たことがあると思う。最近では、繁華街で流すと必ず人だかりができるという『ギレンの系譜』の宣伝ビデオが話題になった。あれは、ガンダムだから、という側面はあるにせよ、その宣伝効果はバカに出来ない。このビデオをプロモーションビデオといい、業界的にはVPと呼ばれる。
 今回は、そのプロモーションビデオの話。少し前まではVHSにコピーされた物がメーカーから配布されていたが、巻き戻しなどの手間を省くため、DVD収録のものも少しずつだが、増えているようだ。

ゲームの宣伝方法

 テレビゲームには、色々な宣伝方法がある。基本は雑誌広告だが、広告の弱点は、ゲーム内容がうまく伝わらないこと。ゲーム内容をユーザーに伝えるという意味において、一番有効なのは、体験版を配布することだ。特に媒体がロムカートリッジからCD-ROMに切り替わったおかげで、割と安価に体験版を配布することが可能になった。自分の所で配るのではなく、雑誌の付録CD-ROMに付けてもらうだけなら、コストは開発者の手間と、せいぜいMO代のみ、となる。まあ、雑誌によっては、体験版を収録してやるから広告代をよこせ、とか広告を出稿しろ、というところもあるようだけど、普通収録自体は無料のはずだ。
 ただし、体験版の弱点は、ユーザーが遊んでくれなかったら無意味だということである。ユーザーが自発的に宣伝に乗ってくれなくてはならないのだ。これは宣伝効果としては、ちと問題な部分だ。

 なにが問題かと言えば、宣伝には露出度という大きな要素があるからだ。露出度というのは、不特定多数の人に、否応なく見せる度合いのこと。例えば、雑誌やら新聞やらの広告や、TVCMなどは見たくなくても、目に入ってくる。実は、宣伝というものは、これが重要なわけ。体験版は、見たくない人には見せることが出来ないから、露出度という意味ではあまり期待できない。
 つまり「このゲームを買いたい」と宣伝したい商品に対して購入動機を持っている人や、新作チェックをマメにしているコアなユーザー層ならば、体験版はかなり有効な武器だが、そうでない人にはいまひとつ効果がないというわけ。
 ご存じのように、TVCMや広告は、けっこうなお金が掛かる。宣伝費の大半は、これのための予算だ。プロモーションビデオはそれらと較べると、作り方によっては比較的安価で作れて、割と露出効果も高い。まあ、お店の人が流してくれなければ、全く意味をなさないわけだが。

VPは、宣伝以外にも使用されている?

 プロモーションビデオには、宣伝以外にもうひとつの存在意義がある。マスターから製造に時間がかかるROMカートリッジが主流だった頃、営業担当者が問屋やショップに営業をする際、肝心のソフトがぜんぜんできていない! というのは当たり前のことだった。売る商品もないのに買ってくれ、というのもふざけた話だが、カートリッジ時代の流通は、色々な意味で先物取引みたいなものだったから仕方がない。
 売りたい商品の情報が、紙資料だけでは、さすがに営業も苦しい。ましてやゲームという商品は、文章や絵だけで全てを説明するためには、企画書や仕様書のような形にしないと不十分だ。読んでもらう相手は開発者ではないのだから、用語が羅列されるような書類を読んでもらって、更に理解してもらうのは無理というもの。だから、できていない商品の代わりとして、ゲームを説明するためにもプロモーションビデオという存在は必須であったのだ。

 私は、ゲームメーカー勤務の頃から、フリーになった現在に至るまで、このプロモーションビデオというヤツを、死ぬほど作っている。元々ゲーム開発の経験があったとはいえ、後にシナリオの仕事を請けるようになっても、特に迷うことなく仕事をこなせたのは、このプロモーションビデオ制作の経験が生きているからだ。特に、原作付きのゲームやアニメのシナリオを担当するといったとき、この仕事で培ったコツというものが、かなり役立っている、といまにして思う。
 実際、プロモーションビデオというものが、どのように作られるのか? 苦労話を交えて、書こうと思ったが、長くなってしまうので、次回へと続く……

TEXT By.吉岡たかを
アニメ・ビデオ・ゲーム業界を経てフリーになった執筆屋。
広告、雑誌、アニメやゲームの脚本など、無節操に書き散らしてきたが、近頃は脚本業に専念しつつある。

[第8回目は4月20日更新予定だよ!]

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