*随想*

アニメの補助金  No.54
以前、テレビで都議会を見ていたとき、都知事が「アニメは東京の地場産業である」と認識している旨の発言があった。

アニメが地方自治体で妙にもてはやされているのは、もはや当たり前だが、国からも助成金が出るなんて話も聞く。

こういう話を聞くと、少し憂鬱になってしまう。
お上から金もらって、本当の作品が出来るかぃ! などという気はない。貰えるものは貰っておけばいい。
ただ、お金を出す方は、お金を払えば宮崎アニメができると思い込んでいる節があるので、その辺の温度差はあるだろうが。

ずいぶん昔、当時の邦画メジャー5社が怪獣映画を作っていた時期がある。
色々な本で書かれている話で、今さら隠すこともないので、直接書いてしまうが、日活の『大巨獣ガッパ』という怪獣映画があった。
当時、怪獣映画は、外貨の獲得につながりやすいということで、政府から制作費を借りることが可能だった。

政府からより多くの制作費を捻出するために、日活は壮大な怪獣映画の脚本を作った。制作費は5億円、当時の邦画の平均予算が5000万程度だと言うから、これは破格である。なんと政府はそれを全額出資した(ここまで政府が出資できたのは、映画会社の社長が某大物代議士と懇意だったからという話もある)。

しかし、5億の予算が出たにも関わらず、制作費は削られる一方で、ほとんどの金は、作品に関係のない映画会社の借金の支払いに当てられた。要は、デキレースだったわけである。

5億の大作の脚本を書いてくれと発注された脚本家、そんな脚本を渡されながら、結局低予算(といっても特撮映画の予算は普通の映画の比ではないが)で作品を作らざるを得ない、監督を初めとした現場スタッフ……どちらも哀しい。

これと同様のことは、アニメでも当然起こりえる、というか、すでにそういった兆候もある。

私が憂鬱なのは、こういうことである。予算をもらっても、作品にもスタッフにも還元されず、金だけが廻っている状態は、さすがにボンクラな私でも気持ちが悪い。
お金もアニメも興味がある人じゃないと、有能なプロデューサーは務まらない。
だが、こういう流れだと、お金だけしか興味がない人が集まってくるからイヤだ。

なぜイヤか?
お金しか目が行っていないと、お客不在のまま作品が製作される場合が多いからだ。
私の場合、依頼がある→その依頼の対象になるお客がいる→お客に喜んでもらうため仕事をする……という芸人根性でしかモチベーションを保てない。これは、作家業としては、我ながら欠陥があると認めざるを得ない。
白状してしまうと、要するに、お客がいないと私は書けないのである。
マスターベーションのシーンは死ぬほど書いているくせに、仕事でのマスターベーションは、まったく得意でないのだ(笑)
2001/10/01



[TOP]
shiromuku(e3)DIARY version 1.01